イベントなどで皆様からのリクエストが一番多かった水木妖怪、それが
バックベアードでした。
確かに魅力的な西洋妖怪の親玉でキャラ的には好きですが、
ソフビにするには、どこから分割していいか分からないし、無数に生えている触手をどうするかが思いつかず
「いやあ、ベアードのソフビは無理ですよー」と答えていました。
そんなある時、電車に乗っていると、オサレな若者がベアード柄のバックを持っているのを見かけたのです。
白地にモノクロでたくさんのベアードがプリントされたバックは無条件にカッコイイものでした。
「この若者は、これが水木先生の作品と知っているのか?」
というマニア独特の大きなお世話を脳内でしながら、そのベアードのプリントを見ていると
まるでベアードの眼力催眠にかかったように、思い立ってしまったのです。
ソフビを作り、ベアード様を普及させよう!
全く恐ろしいことです。帰宅して、すぐにソフビ化について設計し始めました。
当初、正面からも真後ろからも円に見えるとうことで、凸レンズのような形ではないかと考察しましたが
横や斜め上、斜め下から見たときに、やはり違和感を感じてしまう。そこで
「ベアード様はどこから見ても円形でなくてはならない」
と思い立ち、球形に決めました。
分割ラインは、黒い球体に触手以外に唯一付いている「目」から抜くことにしました。
次に触手ですが、原作のように細い触手を再現するには、PVC等で作らなければなりません。
大なまずのヒゲのようにストレートなものであれば、あの細さでもソフビで抜けるのですが
ベアードの触手のように枝分かれしていると、ある程度の太さが必要となります。
そこで、原作ほど枝分かれしていない、短めの触手を球体の周囲に付けようと考えました。
そこで気づいたことが、これを手にした人はどうやってディスプレイすればいいのか。
空中に浮いてる妖怪だからそれでいいとか、台座を付けるとかも考えましたが、なんかベアード様にふさわしくない。
すると、ベアード様の目からぴかぴかっと指令が下りました。
ベアード様を自立させる
原作でも、洞窟とか湖の場面で下の方の触手が脚の役割を果たして立っている絵があります。
これをソフビで表現しようと考えてしまったのです。
そのためには脚の部分の触手を別パーツにして、球体を支えるだけの大きさが必要となります。
だからと言って、脚の触手だけ大きくすると、イメージが崩れてしまう・・・
そこで、これまた費用のことを考えずに、多くの触手を別パーツにすることにしたのです。
全部を別パーツにするとメリハリもなくなるので、長い触手と短い触手が半々になるように設計し直しました。
また、リクエストではドラキュラ、人食いおおかみ、フランケン、魔女とのセットでとのご意見もあったので、
ベアードをミドル、他の妖怪を指人形サイズで作って「妖怪大戦争セット」というのも考えました。
しかし、前作「続・妖怪獣対決セット」で指人形塗装地獄は身にしみて体験済み。
そこで、死神ボディを使ったねずみ男との2体セットにしようと企画しました。
「妖怪大戦争」でのねずみ男にヒゲは無いので、それの再現も面白いかと。
計算上、ねずみ男は17センチぐらいになりますので、
ベアードの高さは劇中のねずみ男との対比に合わせて24センチと決めました。
この決定が後に更なる衝撃を生むとは知らずに。
さて、ようやく仕様が決まり、催眠状態で原型製作開始!
直径17センチの球体をベースに目玉と脚を造型していきました。
そこで、正気を取り戻し、気づいたのです。ベアード様、デカい、デカすぎます!
高さ24センチはスタンダードサイズのちょい大きいぐらいだと想像していたのですが、
本体が球であるため、横幅も24センチ(以上)、触手の無い前後も17センチはあることになるのです。
価格設定が高額になるのは避けたいので、ねずみ男とのセットを断念。オマケはやはり指人形で
と考えましたが、ベアードの大きさに指人形の魔女では対比が異なります。
そこで原作を読み返した所、作るべきキャラクターが見つかりました。
ちゃんちゃんこに乗った目玉親父です。
催眠状態の鬼太郎を正気に戻すべく、決死の覚悟で突っ込む目玉親父は父の鑑。早速、造型開始です。
ソフビなので針は断念しましたが、爪楊枝を持たせるとピッタリ来ると思います。
とまあ、初心である「ベアードのソフビ化は無理」という判断の方が正しかったと思えるほど、紆余曲折を経ての原型製作でした。
こうして、形が出来たので版元様に原型監修をしてもらおうとしたある時、魔力的出来事が起こりました。
ネットで偶然、あのベアード様のバックと再会したのです。
調べてみると「OLLACCONTI(オルラコンチ)」という西麻布のブランドの商品で、
Tシャッツやスニーカーなど水木先生とのコラボアイテムもいくつかあるようでした。
アッシに合うサイズがあればTシャッツも購入したかったのですが、断念してベアードバックのみ購入。(着たきゃ痩せろ)
こんな感じで「ベアードからベアード・・・くくく」と再び眼力催眠にかかりながら、
版元様の所に持っていき、無事 原型監修を受けました。
それが終わればロウ型作業。
当然ながら、本体のシリコンの重さは5kg!重労働の域に達していましたが、ベアード様のために作業。
こうして何とかロウ型をソフビ業者さんに納め、ソフビとして上がってきました。
目標通り、自立しております。
死神との対比でも、大きさはお分かりいただけると思います。
ちなみに、ご覧のように脚の触手を回せば、浮遊形態になりますのでお試しあれ。
ちゃんちゃんこに乗った目玉親父もこんな感じ。
ソフビという中空だからこそ、ちゃんちゃんこのような仕上がりになっているかと思います。
さあ、これで決戦が再現出来ますよ!
費用のコトを考えて、オマケは小さい目玉親父にしたのに塗装は過去最高に複雑だし、
ベアードの目玉の塗装に塗装マスクを作ったりと結局 無茶をしております。
やはり、これまで誰も作らないのにはワケがありますね。
(今頃気づくな)
それでは、イベント・ネット通販でお買い求め下さい!